2022/12/31
今年は映画館に行くことが多かったのでブログでベスト10の簡単紹介をやろうと思います。
音楽に関しては実はあまり新しいのを掘れなくて…というか1ヶ月間バーナードパーディのドラムオンリーの(DJのサンプリング用?)アルバムしか聴いてない時期とかあったので割愛…。バンドマンのくせにね。まあ掘ってはいないけど濃くはあったかも。
というわけで映画館で観た新作映画ベスト10です。
(これを読んだ人も今年観た好きな映画をコメントとかに書いてくれると嬉しいです!)
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10位: 『RRR』
年末に観て滑り込みランクイン!
監督の前作『バーフバリ』は1だけ観たもののそんなにノれず…今作もポスタービジュアルだけだとなんの話かよくわからなかったので…正直飛ばそうと思ってたのですが「その熱量じゃ家だと絶対観ないな」と思って駆け込みで観に行ってきました。
結果、めちゃくちゃ観て良かった!
もうね、全てが大胆。大胆で素晴らしい!
映像は小さい画面でも充分楽しめるくらいの大胆さ(主張の強さ)だけど、音の大胆さは映画館でしか味わえないので観るなら絶対映画館な案件。
小学生の頃読んでたジャンプ漫画以来の「帰り道にマネしたくなる」作品でした。
ロード!エイム!!シュート!!!!!
肩車したい!!!
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9位: 『NOPE / ノープ』
『RRR』に続き、この監督実はいままで苦手だった案件。これも飛ばそうと思ってたのですが、結果めちゃくちゃ観て良かった!
あと「観るならグランドシネマサンシャイン池袋のIMAX GTがいいよ!」というオススメも素直に聞いて良かった…!
IMAX上映ってしょうがないんだけど、IMAXカメラで撮影したところだけ画角が広くなることが多くて、それが個人的に苦手だったんだけど『NOPE』に限って、それこそが良かった!
画角が広くなる度に「来るぞくるぞくるぞーーー!」とお祭り気分。
考察が盛り上がる映画を撮りがちなジョーダンピールが、考察抑えめでストレートなお話で攻めてるのも素晴らしかった!
観終わった後1週間くらい元気出た。
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8位: 『LOVE LIFE』
感情の発露や発話について描いた作品は近年とても多いですが、この作品は『ドライブマイカー』のその先を描いてたような感覚がありました。
修羅場に次ぐ修羅場。主人公の感情の揺れの捉え方がとても素晴らしくて、今いる場所に居心地の悪さを感じる人などに観てほしいなと感じた作品。
終わり方がまたすんばらしくて、エンドロールが終わった後しばらく席を立てなかった。
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7位: 『おーい!どんちゃん』
今年『さかなのこ』という傑作を世に出された沖田修一監督(『子どもはわかってあげない』が僕は大好きです)の自主制作映画。
上映回数がとても少なかったのですが、もっといろんな人に届いてほしい大傑作。
俳優たちのシェアハウス、住人の元恋人が家の前に置いていった赤ちゃんをみんなで育てる…というあらすじだけ聞くと「それ本当に面白いの?」と言われるかもしれないのですが、これ本当に面白いんですよ!
ゆるやかに進む映画の中には、物語とは、演じるとは、人生の他者性…しっかりとしたテーマがあり、いつの間にか感動。エンドロールはしっかり泣いてしまった…。
あと。沖田監督の作品はどれも俳優さんが素晴らしい演技をされているなーと思っていたのですが、この作品で沖田監督自身が俳優の一人として演技している(個人的MVP級演技!)のを観てその答えを見たような気がしました。
どっかで観れるようにならないかな〜!
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6位: 『GAGARINE/ガガーリン』
老朽化する団地に一人残された男の子が宇宙を夢想する話。
地味な映画ではあるのですが、一人ぼっちの世界から他者について再認識していく物語が自分に物凄くハマりました…。
複雑な家庭環境を過ごし、憎らしい場所である団地なんだけど、彼には他に帰る場所もない。 良い思い出もあり悪い思い出もある…唯一の拠り所。
モチーフだけでもう好き!
映画の終わりの音がなんなのか、それが何を意味してるかというのも素晴らしかったです。
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5位: 『THE FIRST SLAM DUNK』年末滑り込みランクイン!!
はい大傑作!!!!!!!!ダークホースだったのでは!?
スラムダンク知識0でCGアニメ苦手の自分でも超楽しめました。
よくあるファンの同窓会映画とかではなく、『THE FIRST SLAM DUNK』というタイトルも「スラムダンクはここから観てね」ってことなんだと解釈しています。
登場人物それぞれの試合前のドラマと、試合そのもののドラマ。バスケを1mmもわからなくても問題ないくらい整理された語り口。1つの試合を軸に進ませる大胆な構成。フィジカルの躍動を捉えた画面と演出。カメラワークの巧みさ。音の演出の素晴らしさ…などなど。
考えれば考えるほど、あれ?映画として凄すぎない!??!
もう既に2回目観たい…。
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4位: 『FLEE フリー』
少年時代、内戦で祖国・アフガニスタンから逃げてきた男が誰にも明かしていなかった過去をカメラの前で語る…。
"亡命"という日本人からしたら遠くに感じる言葉がまったく他人事でないということ、そしてその過酷さを描くドキュメンタリー作品。
ドキュメンタリー作品ですが、アニメーション作品です。
ん?ってなると思います。ドキュメンタリーなのにアニメ?
この作品、映画の形式に「何故?」となる部分が多いのですが、観ていく中で全てきちんと理由がわかっていきます。
映画は語りで進行していき、秘密を抱えていた男の話は過去から今、そして未来に繋がっていく。ドキュメンタリーでありながら一個人の人生をなぞる"物語"として演出が本当に素晴らしく、だからこそ観終わったあと冷静に「これは現実で起きてることなんだよな」と再びショックを受ける。
特に、"歴史的な希望"と"個人の絶望"が同じ画角に収まるマクドナルドのシーンは忘れられません。
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3位: 『オフィサー・アンド・スパイ』
巨匠ロマン・ポランスキー監督の新作で歴史モノ…というポスターや予告だけでもすごい敷居が高くみえるし、腰が重くなってしまう気持ちはわかります。
しかし…全然そんなことないから!!と声を大にして言いたい!めっちゃめちゃ面白いしわかりやすいから!!
軍の内部の闇を暴くため…真実を求めるために奮闘するシナリオは、なんなら『鋼の錬金術師』とかの軍の陰謀劇に通じるところもあって、観終わったあとはハガレン好きにオススメしたいと思ったくらい。
そして、何より映画としての快感指数がすごい!!!
俺、今映画観てる!!最高!!!って感じであっという間に終わった。ホント言うことないんだけどなんで誰も話題にしてないの!?
何度も希望を打ち砕かれながら進む物語…そしてラストの会話でそこまで映画に夢中になっていた観客に突き刺す一言。
マジ傑作。思い出したらまた興奮してきた。
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2位: 『ニトラム / NITRAM』
オーストラリア史上最悪と言われる銃乱射事件。
その犯人・ニトラムが事件に至るまでを描いた作品。
「自分ではない誰かになりたい」「ここではないどこかに行きたい」、そんな普遍的な願いを叶えようともがき、ささやかな希望を見失うほどの失望と絶望を味わい続ける挫折の日々。
そんなニトラムの視点で進んでいくおはなしなので、音もカメラもひたすら不穏。
今にも爆発しそうな彼の気持ちを映画で追体験することで、ニトラムが決して自分と遠くない存在であることに気づく。なんなら近所にいてもおかしくないと思うほどに。
とても丁寧で素晴らしかった。
劇場を出たあと、現実の色が少し変わるような感覚にくらくらし、新宿シネマカリテ周辺をしばらくぼーっと歩いたことが記憶に残る。
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1位: 『スパークス・ブラザーズ』
『スパークス』とは何者なのか?
半世紀も活動しながら、その正体が謎に包まれている2人の兄弟によるバンド。その謎を『ホットファズ』『ベイビー・ドライバー』『ラストナイトインソーホー』等のエドガーライトが暴くドキュメンタリー作品。
…ちなみに僕はスパークスを存在すら知りませんでした。でも全く問題ないどころか、この映画をきっかけにものすごく好きになってしまった!
スパークスは今年公開したレオスカラックス監督『アネット』の原案・音楽を担当してたので「あ!あのオープニングで歌ってた人か!」となる人も多いのではないでしょうか。
この映画は主に
①スパークスを聴いてきた人たち(レッチリのフリー、ベック、ビョーク等豪華!)
②スパークスの関係者たち
③そしてスパークス本人たち
…の3つの語り手で構成されてるのですが、①の人たちがスパークスの音楽(と少しのメディア露出)以外を本当に知らなくて、それぞれひたすらに「わたしと(わたしにとっての)スパークス」を興奮気味に語ってるのが最高。
みんな知らないから事前知識0でオッケー!というわけ。
そして音楽ドキュメンタリーとしてものすごく理想的で、ふんだんに使われる楽曲とエドガーライトらしいリズミカルな編集がとても心地よく、気づいたらスパークスにゾッコンになってた。
そして本人たちの語る波乱万丈な音楽人生…。世界的ヒットと不遇の時期…。
音楽作りの姿勢と覚悟が個人的に物凄く刺さり、映画が終わる頃にははじめましてなのに号泣してた。
先輩…マジかっけえっす…。
特に何か作ってる人やバンドやってる人には観てほしいと思ってるドキュメンタリー。色んな人に勧めてるけど誰も観てくれない。観てよ〜
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…というわけで2022年の個人的映画ランキングでした。
書く前はそれぞれの作品1ツイート分くらいの文量にしようとしてましたが、どれもめちゃくちゃ好きな映画なので熱量でどんどん文字数が増えていってしまった。
今年は、個人的に期待してた映画が「観てみたらあんまり…」ってことが多かったのですが、反対の「期待してなかったけど物凄かった!!」という興奮も多くてとても楽しかったです。
調べてたら1位に上げたスパークスブラザーズはもうアマプラで配信してるそうなので、これから観ようと思います。
ベスト10じゃなくていいので皆さんの今年観たお気に入り映画を良かったらコメントしてください。
ちなみに、映画館で観たけど旧作(劇場でやったのは初めて)だったため入れてませんが、もし(映画館で観た中で)旧作アリだったら『ブリュッセル1080、コルメス湖畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン』が1位だったかも。大傑作。
あと、『スパイダーマン:ノーウェイホーム』はマルチバースなのでランク除外です。
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(映画館で観てない)旧作ランキングだとこんな感じ。
とんでもない作品が入り乱れててウケます。
①機動警察パトレイバー2 the Movie
②ミッション:インポッシブル(1作目)
③千年女優
⑤哭声 コクソン
⑦フェリスはある朝突然に
⑧天井棧敷の人々
⑨ジョニーは戦場へ行った
⑩雨の日は会えない、晴れた日は君を想う
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最後に、今年の映画館鑑賞メモを貼って終わります。来年もたくさん映画館行きたいなあ。
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マルチバースのため除外
・『スパイダーマン:ノーウェイホーム』
・(『ブリュッセル1080、コルメス湖畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン』)
・『スパークス・ブラザーズ』
・『ニトラム / NITRAM』
・『オフィサー・アンド・スパイ』
•『THE FIRST SLAM DUNK』
・『FLEE フリー』
・『GAGARINE/ガガーリン』
•『おーい!どんちゃん』
•『LOVE LIFE』
•『NOPE / ノープ』
•『RRR』
•『トップガン マーヴェリック』
・『ザ・ビートルズ Get Back:ルーフトップコンサート』
・『グレート・インディアン・キッチン』
・『悪なき殺人』
・『シャドウ・イン・クラウド』
・『コーダ あいのうた』
・『ビリーバーズ』
・『ナイトメア•アリー』
・『MEMORIA/メモリア』
・『ベルファスト』
・『ナワリヌイ』
・『神は見返りを求める』
・『リコリス・ピザ』
・『麻希のいる世界』
•『ザ・メニュー』
・『カモン カモン』
・『ハウス・オブ・グッチ』
・『アネット』
・『エルヴィス』
・『ちょっと思い出しただけ』
・『ただ悪より救いたまえ』
•『ある男』
•『さかなのこ』
・『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』
•『こちらあみ子』
・『偶然と想像』
・『ロスバンド』
•『わたしは最悪。』
・『林檎とポラロイド』
・『ゴーストバスターズ / アフターライフ』
•(『ワイルドスタイル』)
・『愛なのに』
•『モガディシュ 脱出までの14日間』
・『ポゼッサー』
•『女神の継承』
•『女子高生に殺されたい』
・『名付けようのない踊り』
・『犬王』
・『ウェディング・ハイ』
•『ブレット・トレイン』
・『ブラックボックス:音声分析操作』
・『マイスモールランド』
•『グリーン・ナイト』
・『すずめの戸締まり』
・『TITANE / チタン』
・『X エックス』
・『シン・ウルトラマン』
・(『たぶん悪魔が』)
•『劇場版 Re:cycle of PENGUINDRUM[後編]僕は君を愛してる』
・『Ribbon』
・『ドクター・ストレンジ / マルチバース・オブ・マッドネス』
・『クライ・マッチョ』
・『選ばなかったみち』
・『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』
•『ブライアンウィルソン 約束の旅路』
•『アバター:ウェイオブウォーター』
・『ドリームプラン』
•『ドント・ウォーリー・ダーリン』
・『ライフ・ウィズ・ミュージック』
計75本
2022/12/10
最近友達になったヨシトシはシェアハウスに住んでいる。
シェアハウスといってもテラスハウスのようなキラキラしたものではなく、アメリカの青春映画のようなどこか退廃的な雰囲気を持った家だ。
閑静な住宅街の片隅、6LDKの大きな一軒家は表札に全く知らないどこかに住んだ大家さんの名字が書いてある。
「みんなが灰を落としちゃうから」と廊下の導線上には灰皿が置いてあり、壁のあちこちに明らかに事故でない傷跡が残っている。
ヨシトシと知り合ったのはそのシェアハウスの住人が主催するパーティにGRASAM ANIMALを誘ってくれたのがきっかけだった。
残念ながら予定が合わず出演できなかったのだけれども、元々Filmarksで密かに映画のレビューを読んで趣味が合いそうな予感がしてた人だったのでこちらから遊びに声をかけた。
出会った日、高円寺の飲み屋で即意気投合した。
自分の経験から、出会って即意気投合する人は長い付き合いになると確信した。
ヨシトシは実は、グラサンより前に千葉でやっていたバンドから自分のことを知ってくれていた。
関東各所に点在するスタジオを利用している高校生が渋谷のライブハウスに出演するイベントで共演していて、それで知ってくれたのだと言う。
また、僕も彼のバンドを知っていた。
その日、たくさんの高校生バンドが出演し、どれも文化祭っぽいバンド名(それは自分達も人のことを言えなかったが)で実体がわからない感じ(もっといえば苦笑してしまうようなユーモア)だった中で、ヨシトシのバンドは『Boogie Wonderland』というEarth Wind&Fireの曲名から取っていて気になっていた。確かそのイベントで唯一ライブを観た気がする。
不思議な繋がりに月並みだけど「世間は狭いな〜」とかぼんやり言ってると、ヨシトシがなにか閃いたような、でもちょっと申し訳なさそうな顔で「そのバンドでパーティに出演してくれないですか」と打診してきた。
ここで自分がやってたバンドを少しだけ紹介したい。
高校生のときやっていたそのバンドは良いバンドだった。
今聞き返すと、拙いながらも作曲やアレンジから当時の自分たちの意思が伝わってくるような。エネルギーがあった。
作曲をしていたはしももまた、出会った日に即意気投合した。
神聖かまってちゃんから音楽に入ったところが共通してたのもあるし、かまってちゃんで1番好きな曲が『男はロマンだぜ!たけだくん』であるところが共通していたことにある種の宿命みたいなものを感じた記憶がある。しかも2人ともの子のデモバージョンではなくアルバムバージョンが好きだった。
彼女の描く曲は物語的で、高校生だったし学校を舞台にした曲が多かったが、自己投影的な歌詞は少女の視点ではなく中性的な少年性も含んでいて刺さる人は確実にいたと思う。
そんなはしもがバンド末期の頃に描いた未完の曲があった。
プールをテーマに描いた『かなづち』と、19歳になったハシモが大人になった生きづらさを歌った『ミニチュアタウン』という曲だ。
その二曲のアレンジが中途半端なまま終わったことがずっと引っかかっていた。
話を戻そう。
そのバンドの復活を打診された自分は正直ちょっとワクワクしていた。一旦保留にして、後日ベース篠原、映像を撮ってるはっかさんと一緒にシェアハウスに行った。
2人もシェアハウスを気に入っていた。
そのシェアハウスは男女4人が住んでいる。
一緒に住んでいるのだからよくぶつかったりもしてるようだけど、そこも込みで側から見てると青春映画のワンシーンのようで、テラスハウスにはない輝きが詰まっていた。
住人の1人、シーシャとカクテル作りのうまいサクくんの言葉に感動したことがある。
「まあうちは計画より実行ですからね〜」
部屋のあちこちで花火をした跡がある家が、しかしエネルギーと輝きで満ちてる理由が全て詰まっているような気がした。
「復活、やるか」と思った。
すぐにその場ではしもに電話をかけ、はしもも「やろっか」と言った。
いつの間にかヨシトシに花火を手渡されてて火がついていた。
イベントまで1ヶ月ほどしかなかったので、やると決まったその場でやる曲をリストアップしてバンド名が恥ずかしかったのでイベント名と青春映画から取って『セントエルモス』と名乗ることにした。
しかし、セントエルモスにはひとつの問題があった。ギターがいないのだ。
高校生の頃、ギタリストのショーンが脱退してサポートメンバーを加えてやっていた。
ショーンは今でも仲良いので頼みたいところだったが、千葉に住んでいるので短い期間で立川で何度も集まるのは現実的に厳しかった。
ギタリスト不在で困ってると、ヨシトシが「僕やります」と手を挙げた。彼はベーシストで部屋にもギターがあった。よし、役者は揃った!と思った。
当時やってた曲は、技術やアイデアの面で意思やエネルギーの強さで乗り切ってたところがあった。
だから、未完の二曲はもとよりアレンジする予定だったが、他の曲も「いまならもっと良くできる気がする」とリアレンジする話になった。
新曲含め7〜9曲アレンジして、ギターのフレーズを教えなければならないので結成してからは頻繁に集まった。
なんとかアレンジを終え、ではギターのフレーズを教えようとなった時、僕は驚いた。
ヨシトシが全然ギターを弾けなかったのだ。
ひと月を切ってるなかで、緊張感が走った。
泊まり込みでフレーズを練って、 まだスタジオに入ってもいない段階で相当な時間を一緒に過ごした。
フレーズを僕が作り、ヨシトシに教えて、あとは自分で練習してもらう。
心配すぎてつきっきりで練習に付き合いたかった。
今回一回限り復活するにあたって、僕は「同窓会のようなライブ」だったり「当人たちの思い出作り」で終わりたくなかった。
結構ストイックに練習してもらった。
そんなこんなでスタジオリハを迎えたのだが、実はヨシトシどころかハシモも篠原も俺も全然弾けてなかった。
ヨシトシ以外の3人は正直どこか「俺らは当時も演奏してたしなんとかなるでしょ」と思っているところがあった。しかしノリが全然出ていなかった。
……やばい。それは僕以外のみんなも感じていた。
週1のスタジオだったのを増やした。自分は新曲だけ作っていたデモを全曲作ることにした。フレーズの見直しにもなるから全楽器打ち込んだ。
心苦しかったがヨシトシに求める練習量も更に上がった。
次のスタジオでは驚いた。
ヨシトシは激的に腕を上げていた。
それは「ギター初めて1ヶ月にしては」とかじゃなかった。ちゃんとギタリストの弾き方になっていたのだ。どんだけ時間をかけてきたのかが伝わってきた。
篠原もはしももめちゃくちゃ練習をしてきたのが伝わってきた。
段々希望が見えてきた。
ここから先は今日のネタバレになるので割愛するけど、スタジオに入る度に譜面には表れない『バンド感』みたいなものは上がっていった。
こんな長文になってしまって何が言いたいかというと、ひとつのライブにしても物語があるなということ。
昨日の最終調整リハではもうしっかりとバンドだったし、良いライブができる感覚がする。
ここに来るまで色々あった、、、とか思ったけどよく考えたら1ヶ月少ししか経ってない。でもそうは思えないほどいろいろやった。
だから昨夜急に、色んな人に見てほしいなという欲が出てきた。
当時観てくれた人もそうじゃない人も。
俺らは楽しむことに専念できるくらいには準備をしてきた。
あと、あのシェアハウスのエネルギーももっと色んな人に伝わってってほしい。
高校生の頃、大して意味を考えずに使ってた言葉で締めたい。
「めっちゃ良いライブするので遊びに来てください」
2022/10/10
ドラムを叩いてると時々自分がわけわからなくなる。
多分スポーツとかでも似たようなことあるんだと思うけど、身体はすごく激しく動いてるのにやけに脳は冷静になるような。そんな時がある。
今日もエイトビートを延々叩きながら「あれ?本当にこの体がこのバカでかい音を鳴らしてるのか?」とぼんやり考えてしまった。
なんて不思議なことだろう。
俺はいま生きるのに必要以上に大きい音を鳴らしてる。
その音をきれいに整えたり、時に荒々しくやったり…まったくどうかしてる。
どうかしてることって最高だ。
願わくばこのどうかしてる動きによって出る、どうかしてるほど大きい音で、みんなをどうにかさせたい。
それが儀式みたいになって、どうかしたカップルがキスとかし始めたら笑っちゃうだろうなあ。
2022/10/08
今日は高校の時にバンドをやってた友達と夢の国(海の方)に行く。
多分5年ぶり(3回目)だ。
まずは船に入って乾杯をする。
ほろ酔いの状態で歩くあの街はめちゃくちゃ楽しい。
陽気に手を振ると誰かしら手を振りかえしてくれる。
みんな楽しそうな顔をしてるのでずっと気持ちいい空間だ。
そんで一通り歩き回ったら適当にアトラクションに乗る。
あの街は細部こそ素晴らしいので待ち時間も色々見つてはしゃいでればあっという間だ。
"文脈のあるこだわり"にとことん弱いオタクな人種にとってあの街は宝の宝庫。
そこにおもてなし要素が加わっていよいよ本当に夢みたいに思えてくる。
ルールはひとつだけ。「お土産屋には入るな」。
とにかく夢の国に没入しに行く。
こんな調子で過去2回、開園から閉園までテンションが下がることなく楽しんできた。
とりあえず今回は開園に合わせなくてもいいか、と10時集合にした。
適当に楽しむということが重要だ。ファストパスなんか考えたこともない。
そうして今、適当すぎて全員集合時間に遅れてるのだった。
2022/10/02
こないだ観た『わたしは最悪。』という映画のあるセリフが何故か深く刺さってる。
主人公の女の子が長年付き合ってた彼氏に別れを告げるシーン。決定的な理由は別にあるんだけどそれが言えないから抽象的な理由しか言えない彼女に彼氏はちゃんと話し合おうと必死で理由で聞く。
それに対して苛立ちもあったのだろう。長年同居してた蓄積を理由にする。
「あなたは私が言語化したくないことも言葉にして話し合おうとする!」
そう言ってたかあやふやだけど、僕にはそう聞こえた。
「うわ、この癖って俺にもあるわ」
って思った。気持ちを言語化することを癖づけてきた。しかも自分は理屈を考えるのが苦手な直感タイプなので劇中の彼氏と比べてだいぶ拙いのも自覚ある。セリフが鈍く体のどこかに刺さった気がした。
映画の中ではそんなに重くないセリフなんだけど2ヶ月経っても心の中から消えていない。
小骨が喉に刺さったような眉間に皺を寄せる異物感と「いままでそれをしなきゃって思ってたけど言葉にしないっていうのも大事だな」と身がちょっと軽くなったような感覚。
ここしばらくの間でもうひとつ突き刺さった言葉がある。
これは『激マン!』という漫画『デビルマン』制作秘話を作者・永井豪が描いた漫画の中の一コマ。
見開きどころか大ゴマとかでもなくて、本当に小さいコマのさりげないセリフなんだけどこれがやけに刺さった。
そもそも『デビルマン』を初めて読んだのが今年に入ってからで、それまでは昔のヒーローものみたいな漠然としたイメージとアニメのテーマソングしか知らなかった。正直ナメてた。
原作も伝説的名作としてよく評判を聞くけど、まあ全5巻だし、なんというか想像の範囲は超えないだろうな、みたいな。
…いや、とんでもなかった…。
5巻という短いなかで強烈な展開が転がり続け、想像してなかったほどの黙示録的結末に完全に打ちのめされた。読み終わってすぐに友達みんなにLINE送った。
そして、なによりもその漫画の中にある理屈じゃない"なにか"が自分の中に残った。
その"なにか"の正体が知りたかった僕は制作秘話漫画があると聞いて飛びついた。
そこですべて腑に落ちたのが上のセリフ。
エネルギー>アイデアという、忘れかけてた大事なもの。
デビルマンの中にあった"なにか"とは凄まじいエネルギーに他ならなかった。
永井豪はデビルマンを描き上げるためだけに同時に連載してた人気漫画を全て終わらせる決意をする。それもデビルマンに全エネルギーを賭けたかったからだ。
そのエネルギーは本にしっかり閉じ込められて数十年後の自分に衝撃を与えてる。
それが「エネルギー>アイデア」という構図のなによりの説得力だった。
言葉にするということは何かを伝える上で大事なこと。うん、正しい。
でも言葉にしないということもこれまた正しい。
セリフや物語では伝えきれない、言葉にしないなにかを伝えるのに必要なのが"エネルギー"なんだと思う。
思えば音楽をする上で何故バンドという形式に自分がどうしようもなく惹かれるのか。
関係性が音に表れる不完全さ。しかしそれ故の奇跡みたいな瞬間。
僕はやっぱり言葉にならない"なにか"と"エネルギー"を空間に充満させたいんだと思う。
2022/09/15
あーーーーーーーー!!!
って叫びたい。
あああああああああ!!!
じゃなくて。
あーーーーーーーー!!!
なんだよなあ。
なんでなのか考えることもできるけど、言葉にしたくない気持ちかもしれない。
誰かと喋りたい一方で、もっと言葉から解放されたい。
こりゃあ手を動かすしかないねえ。
2022/09/08
いつの間にかソファで寝てて、起きたら深夜3時だった。
21時くらいまでは記憶がある。
たまたま開いちゃった普段絶対観ないワンピースの考察動画がめちゃくちゃ過ぎて「言いたい放題か!」と爆笑したのが最後の記憶。
外の雷の音がめちゃくちゃデカくて地鳴りがしてる。
起きるのがあと2時間遅かったらいい1日の始まりを確信できるけど、この時間ってかえって微妙だよなあ。
のそのそと動き始めることにする。
昨日から観始めた『母をたずねて三千里』が激ヤバすぎるのでみんな一緒に観始めてほしい。