2022/10/02
こないだ観た『わたしは最悪。』という映画のあるセリフが何故か深く刺さってる。
主人公の女の子が長年付き合ってた彼氏に別れを告げるシーン。決定的な理由は別にあるんだけどそれが言えないから抽象的な理由しか言えない彼女に彼氏はちゃんと話し合おうと必死で理由で聞く。
それに対して苛立ちもあったのだろう。長年同居してた蓄積を理由にする。
「あなたは私が言語化したくないことも言葉にして話し合おうとする!」
そう言ってたかあやふやだけど、僕にはそう聞こえた。
「うわ、この癖って俺にもあるわ」
って思った。気持ちを言語化することを癖づけてきた。しかも自分は理屈を考えるのが苦手な直感タイプなので劇中の彼氏と比べてだいぶ拙いのも自覚ある。セリフが鈍く体のどこかに刺さった気がした。
映画の中ではそんなに重くないセリフなんだけど2ヶ月経っても心の中から消えていない。
小骨が喉に刺さったような眉間に皺を寄せる異物感と「いままでそれをしなきゃって思ってたけど言葉にしないっていうのも大事だな」と身がちょっと軽くなったような感覚。
ここしばらくの間でもうひとつ突き刺さった言葉がある。
これは『激マン!』という漫画『デビルマン』制作秘話を作者・永井豪が描いた漫画の中の一コマ。
見開きどころか大ゴマとかでもなくて、本当に小さいコマのさりげないセリフなんだけどこれがやけに刺さった。
そもそも『デビルマン』を初めて読んだのが今年に入ってからで、それまでは昔のヒーローものみたいな漠然としたイメージとアニメのテーマソングしか知らなかった。正直ナメてた。
原作も伝説的名作としてよく評判を聞くけど、まあ全5巻だし、なんというか想像の範囲は超えないだろうな、みたいな。
…いや、とんでもなかった…。
5巻という短いなかで強烈な展開が転がり続け、想像してなかったほどの黙示録的結末に完全に打ちのめされた。読み終わってすぐに友達みんなにLINE送った。
そして、なによりもその漫画の中にある理屈じゃない"なにか"が自分の中に残った。
その"なにか"の正体が知りたかった僕は制作秘話漫画があると聞いて飛びついた。
そこですべて腑に落ちたのが上のセリフ。
エネルギー>アイデアという、忘れかけてた大事なもの。
デビルマンの中にあった"なにか"とは凄まじいエネルギーに他ならなかった。
永井豪はデビルマンを描き上げるためだけに同時に連載してた人気漫画を全て終わらせる決意をする。それもデビルマンに全エネルギーを賭けたかったからだ。
そのエネルギーは本にしっかり閉じ込められて数十年後の自分に衝撃を与えてる。
それが「エネルギー>アイデア」という構図のなによりの説得力だった。
言葉にするということは何かを伝える上で大事なこと。うん、正しい。
でも言葉にしないということもこれまた正しい。
セリフや物語では伝えきれない、言葉にしないなにかを伝えるのに必要なのが"エネルギー"なんだと思う。
思えば音楽をする上で何故バンドという形式に自分がどうしようもなく惹かれるのか。
関係性が音に表れる不完全さ。しかしそれ故の奇跡みたいな瞬間。
僕はやっぱり言葉にならない"なにか"と"エネルギー"を空間に充満させたいんだと思う。